たしか高校生のころ、「熱いトタン屋根の上の猫」という映画をテレビで見たおぼえがある。
一風変わった題名にひかれて観たのだが、タイトルはストーリーとは直接関係なかったみたいで、家庭内不和のドラマだった。ポール・ニューマンとエリザベス・テーラーの夫婦役だったろうか、詳しい内容は忘れてしまった。
その映画のタイトルではないが、この暑さの中、近くの工場の屋根の上で働く人がいる。
群馬ではこのところ、地上でさえ37度もあるのに、さえぎるものが何もないトタン屋根の上はいったい何度になるのか、3人ばかりのペンキ屋さんが屋根の塗りかえをしていた。
4日間ほどかけて塗り替えが終わったら、こんどは電気工事らしき人が、3日ほどやはり屋根の上で働いている。
頭からタオルをかぶった赤い顔の男たちが、水を取るため地上へ下りているのを、工房の行き帰りに何度か見かけた。鍛え方が違うのか、職人さんは案外平然としている。感心することしきりである。
しかしペンキ屋さんにしても電気工事屋さんにしても、暑いから出来ない、寒いから休むなどと言っていては仕事にならない。震災後の補修工事で忙しい瓦屋さんや板金屋さんにしても、ことは同じである。いずれもたいへんな仕事だ。
昔からこういう現場で仕事をする人に対して、自分の仕事場でものつくりをする職人さんを居職(イジョク)と呼んでいる。建築関係でいえば、家具、畳、建具 のような職人である。屋内で働くのだから恵まれているように見えるが、そんな職人の仕事場とて、冷暖はなく冬の暖房もストーブがあるだけといったところがほとんどである。ただこうやって屋根の上で働く人たちを見ると、同じ職人といっても、こちらはまだ楽かと思う。苦楽というレベルのはなしではあるが。
ご多分にもれず、うちの工房も夏は扇風機があるのみで、室温が35度ぐらいになるとさすがに、体は動かず、頭は働かず、気持ちも萎えてくる。わたしなどは炎天下の朝顔のごときありさま。
お盆前にこのあたりまで書いたが、どうも先に進まなくなったので、しばらく放っておいたら、その後は梅雨のやり直しみたいに雨が続いて、ちっとも暑くない。夏はもう終わったのかもしれない。隅田川の花火も終わったことだし。
さて、わたしだけだろうか。猛暑がくれば暑すぎて仕事にならないと弱音をはき、凍てつく寒さの日は、ストーブの傍で猫みたいにうずくまっている。いまさらカラダを鍛え直すにも、遅きに失した感あり。せめて現状維持にと最近ウォーキングを始めたのだ。
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