ムスメは受験生である。
夕飯のあと、数独(パズル)を解いていると、「暇なら日本史の問題出してみてよ」と言う。
言われるほど暇でもないのだが、しょうがないか。
自分のときは目指したのが美大だったので、あまり真剣に受験勉強をしなかったが、ムスメは普通の大学を受けるので、たいへんそうである。
「過去問」という、かつて入試で出た問題を集めた参考書があって、ぱらぱらとめくってみる。
ちなみに、解けますか?(答えは最後に)
1 梶原景時は、1180年8月「○○」の戦いにおいて、源頼朝を救ったことから信任を得た。
2 応仁の乱の際、将軍家以外に、「○○氏、○○氏」の家督相続争いも起こった。
3 本田利明は「○○」や「○○」を著した。
こんな問題が本一冊分、時代順に並んでいる。
ぼくは日本史が嫌いではないし、かつて司馬遼太郎の「街道を行く」シリーズを読破したくらいだから、詳しい方だと自負していたが、何一つ答えられない。
「オマエ、こんなこと憶えたって何か意味があるの?」
「ていうか、こんなの答えられる日本人が、いったい何人いるっていうの?99%は無理だろ。」
少々酔いの回った父は、無責任なことを言う。
「意味のないことをやるのが受験なの。」
ムスメは大人なもの言いで軽く受け流す。
ムスメは、ときどき久保君のことを話題にする。
久保君は中学のときの同級生で、学校は違うけどライン友達らしい。
彼はこのたびのセンター試験で、一部回答欄を間違えるという手痛いミスをしたらしい。
「クボは死にたいって言ってる。大げさだよな。クボは国立志望なんで、そりゃ痛いだろうけど。」
「・・・」
「クボんところは国立じゃないとだめなんだって。クボの姉ちゃんは私立なのにね。」
どこもそれぞれに家庭の事情があるのだ。
それから何日かして、二人で晩ごはんを食べていたら、ムスメがぽつりと言った。
「クボの同級生が自殺したんだって。」
久保君はセンターの成績が悪かったのより、こっちの方がずっとショックだったそうである。
ウチの子とは別の学校の、知らない生徒のことで、詳しい事情はわからないが、同じ受験生を持つ親としては胸が痛む。
大学受験なんて、しょうもないことだし、こんなことで人間を判断されてたまるかと、親は、そしておそらく娘も思っている。
ところが、どうでもいいから適当にやっとけよ、別に行かなくてもいいんだし、なんて風にも言えない。
それどころか、できれば少しは名前の通った学校に受からないものかって、親も娘も考えてしまう。
弱いものである。
まだしばらくは続く、なんともすっきりしない日々。
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