材木にも相場があって、これくらいの丸太なら、あるいは板材なら、今だったらこのぐらいの価格というのはいちおうある。
それは樹種と木のグレードによって違ってくるのだが、基本は立方単価と材の体積をかけて価格を決めている。
市場や大きな材木屋さんはこの方法でいいのだが、個人でやっているような材木屋さんの、通常の取引ではない、ちょっとイレギュラーな取引では相対で決めることがある。
なにせ丸太一本、板1枚まったく同じものはないので、売り手と買い手が材を挟んで、その場の交渉で値を決めることになる。
そんなとき材木屋さんが、「値段はいくらでもいいから」とか、「そちらの言い値でいいよ」なんて投げてくることがある。しばしばあるので、業界の常套句みたいなものなのかもしれない。
またきたかと思う。
日本中どこへ行こうと、モノの値段は売り手が決めて、客は納得すれば買うのであって、買い手が値段を決めるなんてことは普通ない。
それではお言葉に甘えて、ちょっと安目に値を付けると、それじゃ仕入れ値にもならないとか、製材賃が高かったとか、これはなかなかお目にかかれない材だとかいって、思わぬ抵抗に会う。
ちっともこちらの言い値じゃないのだ。それなら最初から幾らだって言ってよ。
材木屋さんの頭の中には、このぐらいは欲しい、このぐらいで売りたいという値段があるのだろうけど、それは伏せておいて、客に希望価格を言わせる。ちょっと面倒くさい。
例えば仮に、材木屋さんが10万円で売りたい材があるとする。
買い手の言い値が8万円だと、先ほどのようにいろいろ理由を付けて、材木屋さんは10万円までもって行こうとするだろう。買い手が応じなければ、お流れにすることもできる。
言い値が10万円だとすると、それで交渉成立。売ってもいいし、相手の顔色を見て、「悪いけどあと少し乗っけてよ」とかお願いしてみるもよし。
買い手がよほど欲しい材で、あるいは価値がよく分からなくて、15万と値を付けたら、そのぐらいが相場でしょうねと言っておく。高くてもあくまで買い手の言った値段だから、ごっつぁんです。
なんて具合に、後出しじゃんけんみたいなことができる。
ちょっと意地悪な見方をすればそうなるのだが、さてどうでしょう。
振り返れば、若いころは幾度か高い買い物をした気もする。しかしながら、何ごとも授業料を払わないと上達しないのだ。そう思うことにしている。
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