家具の納品や材木の運搬で使うバンは、貨物車という扱いになり、車検が毎年やってくる。
もう10年以上前から同じ整備工場に出しているので、車検が近づくと、そこから車検のお知らせが届く。それでもまだひと月以上先だからと、しばらく放っておくと、今度は電話がかかってきて、いつ予約をされますかと言ってくる。
隣町にあるその整備工場は、元々家族経営のだったのだが、今は整備士だけでも7~8人はいるようで、その業界では大きくやっている方だと思う。みなテキパキと働く。
毎回うちのバンの担当は決まっているらしく、30代後半ぐらいの感じのいい整備士が付いてくれる。
車検は、立ち合い車検というのか、一時間ちょっとで終わる方式。自分で持ち込んで、そのまま乗って帰れるので、これだと忙しい人は助かる。
また届いた案内には見積り価格が記されていて、交換部品や修理箇所がなければその値段で済む。
また何か不具合が見つかっても、本人立ち合いのもと、この部品はあと1年は持ちますが次回の車検では取り換えになりますとか、だいぶすり減ってきているので取り替えた方がいいが、ついては部品代がいくら、手間賃がいくらかかります、というようにこと細かく説明してくれる。明朗会計なのである。
バンは走行距離が12万キロを超えた今も、毎年車検時に見てもらうだけで、これまで大きな故障はなく、その点では信頼し安心して任せていた。
ところが去年の夏前に、材木の買い付けに福島に行ったときのことである。
高速道路を3時間ほど走行したあと、峠を抜ける国道を走っていたら、微かではあるがゴトゴトと振動音がしているのに気付いた。車の足回りから音がするみたいで、最初は道路のデコボコを拾っているのかと思ったのだが、路面がそんなに荒れているわけでもない。
そこで車を止めて床下と足回りを確認したが、見たところ特に変わったことはなさそうだった。
気のせいぐらいに思ってまた走りだしたものの、やっぱりゴトゴト音が止まない。気持ちが悪いというか落ち着かないので、また車を止めた。
このときは仕事を手伝ってもらっているH君も一緒だったので、二人で何だろうねなんて言いながら、這いつくばって床下を覗き込んでいた。
原因も何もよく分からない、半ば諦めかけていた時だった。
「ナットが回りますよ」とH君が声を上げた。
左の後輪のタイヤを固定しているナットが、指で回るというのだ。しかも6個あるナット全部、指でクルクル回るというのである。
こんなことってある?
峠の山道で、二人で顔を見合わせてしまった。
前回車検に出して以来、今日までタイヤ交換もパンク修理もしていない。
子供のいたずらで回せるようなものではないし、走っているうちにタイヤホイルのナットが緩んできたなんてことが、あるとは思えない。仮にあったとしたら、それはそれで大問題である。
あれこれ考えるに、車検で一旦タイヤを外したあと、取り付けるとき締め忘れた、それ以外無いのではないか。そういう結論になった。
整備工のお兄さん、頼りになりそうな感じだったけど、こんなこともあるんだ。
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