ご近所というわけでもないが、そう遠くないところに新しく家が建った。
毎朝、子供を駅に送るのに通っている道沿いにある、見慣れた場所である。
わたしが土地をさがしていた去年の暮ごろまでは、そこはまだ畑地だった。作物が植わっていない空いた土地だったが、隣接する道路から人の背丈ほども下がった土地で、とても家が建つとは思えなかった。
それが今年に入って何やら工事が始まり、見ていると、畑の中にコンクリートの壁が立ちはじめた。どうやら擁壁(ようへき)を造って盛り土をするらしい。
土地がかなり低いだけに工事は大がかりで、道路側以外の三方を高い壁で囲い、その中に大量の土が投じられた。それが今年2月のことである。
雨降って土固まるではないが、そのまましばらく放置でもして、何年か後に宅地として売りに出すのかと思っていたら、造成工事に続いて、間を置かず基礎工事が始まった。どうやら住宅が建つらしいのだ。
現場の登り旗をみると、テレビCMでもお馴染みのハウスメーカーの家である。
基礎コンクリートが打ち終ると、工事現場は足場パイプとシートで覆われて、進行状況は外から見えなくなった。
それから二か月も経ったろうか、覆いが外れると、家がすでに完成していた。あっけないほど簡単にできてしまった。
その後、4月の終わり頃だったか、内覧会があり、黒いスーツ姿のメーカーの営業社員が、お客さんの案内をしていたと思ったら、日を措かず引っ越し屋さんのトラックが横付けされた。
いまはもう、二階のベランダで白い洗濯物が揺れている。
ついこないだまで、それこそ「地べた」もなかったところに、家が現れ、人の営みがある。通るたびにキツネにつままれたような、何やら不思議な気分になるのである。
さてウチはというと、先週ようやく外周の基礎工事が始まったところだ。ウサギとカメのカメより遅いが、速ければイイってもんでもない。

三角の先端から。広角で撮る。
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