「私もスマホに替えようかな。ニシカワさんどう思う?」
年の離れた友人にそう聞かれた。
出かけた先で、ぼくがスマホで写真を撮って、ほらきれいでしょって見せたら、欲しくなったらしい。
でも彼女たしか78歳だったかな。
「誰か教えてくれる人がそばにいればいいけどね、難しいかな」
彼女は去年パートナーを亡くして、独り暮らしである。
そういう僕だって、おととしの暮れにガラケーから替えたのだから、スマホはまだ1年ちょっと。
いくつかの面倒な設定は連れ合いにやってもらい、娘に使い方を教わりながら、やっとのことだった。とても使いこなしているとは言えない。
先日納品に行った先は、新しい住宅地だった。
初めての土地でも、たいていは車のナビで目的地まで行けるのだが、もう10年以上前のナビなので、新しい番地だと出てこない。
高速道路なんか、圏央道の八王子より先はないし、北関東道は大田で終わっている、というしろものなのだ。町村合併なんかしていて、地名が変わっているともうお手上げのナビである。
納品先である新築住宅の近くまで来ていることは間違いないのだが、どれも新しい家ばっかりなので見つけられない。まだ表札のない家も多く、番地の表示がない所をぐるぐる回ってはみたが、電話して聞いた方が早そうである。
そこでお客さんに電話をかけた。
「近くまで来てるんですけども・・・」
「いまどこにいるんですか?」
「学習塾のところを入って来て、右に曲がってその辺りなんですけど・・・」
「えぇーどこだろう?」
「さっきカフェがありました」
「カフェー?」
「コンビニがなかったですか?」
「いやなかったなぁ。何処のコンビニですか?」
らちがあかないとはこのことである。
そのときふっと、いま手に握っているこのスマホにもナビがあるのを思い出した。
最新情報の地図にGPS。そうかその手があった。
「あっ、ちょっと待っててください。車のナビが古くてだめなんで、こんどはスマホのナビで捜してみます」
そこでいったん電話を切った。
以前ムスメに教わったやり方で、地図を表示。
行き先の住所を入力。
ナビを開始。したつもり。
しかしいっこうに案内が始まらない。なんで?
もういちど住所を入力。
ナビ開始。してくれない。
あれぇ、やり方忘れちゃってる。
そういうぼくにしても、高いお金を払って肝心なとき使えないのである。
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